平成26(行ケ)10134  審決取消請求事件(平成26年10月22日知的財産高等裁判所)

事案の概要と争点

 本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する拒絶不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟(知財高裁)であり、本件の争点としては、①商標法3条1項3号該当性、②手続違反の有無、がありましたが、ここでは、主に②の手続違反についてのみメモっておきます。なお、商標は「新型ビタミンC」(標準文字)で指定商品は「サプリメント」ですので、個人的には3条1項3号に該当するのは妥当だと考えています。

判決内容とコメント

 今回は特許庁における②手続違反が争われましたが、簡単に言うと、拒絶査定の理由は、商標法3条1項6号(拒絶理由も同号)とされ、拒絶審決では、商標法3条1項3号とされている以上、審判段階で3条1項3号違反について、新たに拒絶理由通知を発出する必要があったのかとういう点です。

 この点に関して裁判所は、まず3条の性格(1号~5号と6号)について述べた上、

・・・本件査定と審決とでは,出願を拒絶すべき根拠となる規定が相違する。しかしながら,本件査定と審決は,いずれも,本願商標から「新タイプのビタミンC」(前記1(1)に認定の「従来のものとはかわって,新しく考案され た型のビタミンC」と同旨)との認識が生じることを前提として,これを指定商品に使用しても出所表示機能を有するものではなく,商標法3条1項所定の商標登録の要件を欠く商標に該当するという共通の結論を示したものといえる。両者は,その判断の内容において実質的に相違するものではなく,その審理対象も,「新タイプのビタミンC」の意義という同一のものであって(そして,原告は,実際に,本件における主張と同旨の意見書〔甲6〕を提出している。),審決が,実質的に新たな拒絶理由を示したものということはできない。したがって,審決に,「拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない。」とする商標法55条の2第1項で準用する同法15条の2に違反するところはなく,原告の上記主張は,採用することができない(なお,原告は,審決が新たな認定事実も加えて理由を変更したと主張するが,審決を正解しない失当な主張である。)。

 と述べ、今回の3条1項3号と3条1項6号では、判断している内容が実質的に相違しておらず、審理の対象も、「新タイプのビタミンC」がどういう意義であるかという同一のものであるとして、新たな拒絶理由を示したものではないと述べ、商標法55条の2で準用する15条の2違反とはならないとしました。要するに、形式的には3条1項3号と6号というように拒絶の条文が異なるが、これらは重複するところがあり(3号は例示、6号は包括のため)、実質的には同じだから反論の機会は不要ということです。

 商標法55条の2第1項では、「審判において」、「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」には拒絶理由を通知しなければならないとされていますが、この趣旨は、審判における出願人の反論の機会の確保(適正手続の担保)でしょう。形式的にこの条文を読むと、3号と6号で拒絶の条文が異なる以上、拒絶理由通知を打つ必要があるようにも読めますが、3号と6号の特異な関係を考慮して、機会を与えなくても不利益はないとして今回の結論となったのだと思われます。ただ、条文文言を素直に解釈すると、拒絶条文が異なる理由である以上、拒絶理由通知を改めて通知すべきであった気がします。